1967年にモハメド・アリに敗れたボクサー、アーニー・テレルの話です。彼は2014年12月16日、75歳でシカゴの病院で亡くなっていまして、晩年は認知症だったとのことです。
彼は2004年には世界ボクシングの殿堂入りを果たしていまして、1960年代を代表するヘビー級のファイターでした。ただ、モハメドアリの影に隠れていたんですが。
生涯戦績は55戦46勝(21KO)9敗ですが、偉大な彼のもっとも有名な戦いは、モハメドアリとの1戦ですね。その試合でよく言われる事は、「What’s my name?」です。アリが試合中テレルに対して発した言葉です。
試合前のインタビューでは2人の間に衝突が起こります。まず、テレルがアリに対して「カシアスクレイ」と呼びます。その事に対してアリが激昂。これが何を表しているのか。アリは1964年に『ネイション・オブ・イスラム』への忠誠を公言してイスラム教徒としての名前『モハメド・アリ』を名乗るようになり、つまりカシアスクレイという名前は奴隷の名前だったとアリは表現しています。
それを分かった上でテレルは挑発していたのです。それに対してアリは「お前はアンクルトムだ!」と返します。アンクルトムは「白人に媚を売る黒人」「卑屈で白人に従順な黒人」という軽蔑的な表現をされますから、もちろんテレルは激怒。試合前から二人の戦いは始まっていたのです。
試合に関してはアリが大差の判定勝ち。3ラウンドにテレルは左目を負傷しまして、打たれに打たれました。15ラウンド持ちましたが「8ラウンド以降テレルは無力だった」と言われており、アリは何度も何度も『What’s my name』と叫んでいる様子が分かります。
「アンクルトム!俺の名前は何だ!?アンクルトム! 俺の名前は?俺の名前は何だ!」といったように…
テレルの両目は腫れ上がり、3万7,000人を超える観衆の中には、試合の中止を求める声が多く上がりましたが、主審はストップせず。結局テレルは試合後に左目の下の骨折を修復する手術を受けました。
この試合でアリは「悪質だ」と非難されました。それはノックアウトできるはずのテレルをさらに痛めつけるためにわざと試合を長引かせたのではないかと言われたからです。アリ自身はこれを否定し、単にノックアウトできなかったと述べました。
そしてアリはこう言いました。「倒せたとは思わない。何度かノックアウトするチャンスはあったが、彼はとても強かった。8ラウンド以降、俺は彼に打撃を与えたけど、自分が疲れていることに気づいた」。
その試合を観てみると、確かにアリが試合を長引かせてる感が否めないですが、アリがそのように発言しているという事は、そういう事なのでしょう。とは言いつつ、そんな事を考える余裕もないでしょうし、相手も自分を倒しに来ています。ノックアウト出来るタイミングがあったらしているでしょうし、そんな論争は興味ありません。
試合後、時が経つにつれて2人は和解して友好的になっていき、テレルは「アリ」と呼ぶようになりました。2009年にテレルはアリとの試合について「彼が何を言ったかなどは重要ではない。あれは彼なりの試合の進め方だったんだ」と発言。私なりの解釈をしますと、その発言の意図はワザとアリが試合を注目させるためにトラッシュトークしたんじゃないかって思う訳です。あくまでも私の解釈なので悪しからず。
「What’s my name?」アーニーテレルとモハメドアリ
テレルは1939年4月4日、ミズノ州ベルゾーニの近くで生まれています。小作農の家庭で10人兄弟でした。その後一家でシカゴに移住し、父親は工場で働きました。
テレルは10代前半にボクシングを始め、ジム代を稼ぐためにホテルのエレベーターオペレーターをしていました。1957年にプロとして活動を開始するまでは、シカゴでゴールデングローブのアマチュアチャンピオンに2度輝いたと情報があります。
プロを引退してからは独学でギターを学び、アーティストとしても活動しています。レコードのプロデュースを始めたりし、ボクシングをやっていた時よりも多くのお金を稼いだと言われています。多才ですよね。
バンド名については「アーニー・テレル・アンド・ザ・ヘビーウェイト」という事が分かりました。『トゥナイト・ショー』という番組などに出演したようです。割と有名な番組なのでしょうか。
その後はタイトルを獲得した選手のトレーニングやマネージメントを行ったり、政治にも挑戦したり。(落選しましたが)
清掃・メンテナンスサービスの会社を立ち上げて数百人の従業員を抱え、大成功を収めるなどしています。ビジネスマンとして活動し続け、そして冒頭言ったように2004年には世界ボクシング殿堂入りを果たしています。偉大なる男ですよね。
テレルは1960年代にシンガーとして活動していますが、1970年にボクシングのリングに戻って1973年まで戦っていますから、やりたい時にやりたい事をやるという性格なのでしょう。生涯戦績は55戦46勝(21KO)9敗です。
それではテレルの歌声をどうぞ。笑
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